スキンケア大学・ヘルスケア大学の健康・美容悩みユーザーのデータを活用した需要予測の可能性について講演させていただきました。
2017年12月7日~8日の2日間、東京・虎ノ門ヒルズで開催された『リテールアジェンダ2017』にて、講演機会をいただきました。イベントの振り返りと活動報告として、簡単なレポートをアップさせていただきます。
■リテールアジェンダとは?
リテールアジェンダとは、国内外のリテールのマーケターとメーカーのマーケター、そしてパートナーをつなぎ、一気通貫のマーケティングを実現するためのカンファレンスです。本カンファレンスにより、「カンファレンス」と「ネットワーキング」が高いレベルで両立されることを目指しています。
■オフラインとの可能性を模索する
弊社は2010年創業来、インターネット産業においてWEBコンテンツの受託制作から自社WEBメディアの企画運営で成長してきたベンチャー企業になります。弊社が運営している「スキンケア大学」「ヘルスケア大学」のメディアで培った生活者の健康・美容の悩みデータを活用して、様々な施策をオンライン上にてトライしていました。
ただ、生活者のライフスタイルは勿論オンラインに限られるものではないため、オフライン含めて、弊社の培った資産(データ)の活用の幅を広げていくことはできないかということを日々、感じておりました。
今回は、リテール様、メーカー様、パートナー様のステークホルダーが一堂に会す、非常に希少かつ貴重な機会であったため、弊社の今後の事業可能性を模索するために、参加させていただきました。
今回お話しさせていただいた内容を簡単に振り返りながら、具体的なデータを用いて、いくつかの事例を紹介させていただきます。
■生活者の悩みが高まる要因(トリガー)が何かをデータで発見する
インフルエンザの流行は、「発症した」データをベースに情報発信をされているが、起きてからではなく、「起きる前」に予測することはできないか!?というテーマでデータ分析を行いました。つまり、目に見える動きではなく、「インフルエンザ」に生活者が意識を向き始めるトリガーは何か!?ということを探ろうという試みです。
ヘルスケア大学の「インフルエンザ 予防」に関する記事と「インフルエンザ 対策」に関する記事を閲読するユーザーデータを分けて、気温や湿度といった環境データを掛け合わせて分析を行いました。
結果、「インフルエンザ」の悩みにおいて最も相関が高かったものは、「絶対湿度」でした。普段、私たちが天気予報で触れる“湿度”は、「相対湿度」と呼ばれるもので、気温と相対湿度の数値を基に「絶対湿度」を求めることが可能です。
分析の結果、「インフルエンザ 予防」に関するトレンドは、一般的な流行トレンドと比較し、やはり生活者の意識が向き始める時期は早いことがわかります。(自明のことと思いますが)
予防についての意識が向き始めるポイントは、「絶対湿度が11kg/m3」を下回ったときに、一気に意識が高まることがわかりました。
※対策のニーズは、「絶対湿度が7kg/m3」を下回った時にトレンドがあることがわかります。
ここから、予防に関するグッズの棚づくりや売り場工夫を「絶対湿度」という予測を持って、前もって対応をすることができると考えられます。従来のように、例年の流行り時期を見て、動くのではなく、データを持って、確かな予測をしていくことができるのではないでしょうか。
■生活者の行動様式をデータで発見する
次のケースは、UVケア(日焼け)に関する行動様式についてデータを分析してみました。
仮説としては、「紫外線量(UVインデックス)と比例して、UVケアに関する意識も高くなっている」という前提でデータの分析をしてみました。
結果、4月下旬から5月上旬のゴールデンウイークを境に、UVケア(青色線)のニーズが高まっていることがグラフから見て取れます。しかしながら、「紫外線量(UVインデックス)」と「UVケア意識」は一定相関をしているが、梅雨時期においては例外であるということがわかりました。梅雨時期にはUVケア意識が“ぽっかりと穴”があることがわかります。
梅雨時期は、照射時間が短く、生活者はUVケアに対する意識が希薄化しているのだと考えられます。しかし、紫外線量は減っているわけではないので、この時期にケアを怠っていると、後の肌トラブルに大きな影響を及ぼすことが予想されます。(シミ、くすみ等)
とすると、生活者の意識が向いていないこの時期に、売り場で危機意識を醸成することにより、この時期のUVケアグッズの売上のベースを上げられる可能性があるのではないかと考えられます。
一方、メーカーからもゴールデンウイークや夏場は、競争過熱するため、あえて時期をずらし、この梅雨時期に今までとは違ったコミュニケーション(危機感の醸成)をすることで、これまで接点を持てなかったお客様へのアプローチをする機会にもなると考えられます。
この事例は、今まで当たり前であろうと思われていた事象(紫外線量に比例した、UVケア意識の高まり)がデータという定量的なアプローチにより、新たなインサイトが見つかった事例といえます。
■併発する悩みが何かをデータで捉え、併売提案に活用する
弊社のメディアは、健康美容の悩みデータを持っていると再三お伝えしましたが、人の悩みというのは、同じタイミングで1つだけの悩みを持っているわけではなく、2つ、3つと悩みを併発していることが多いです。
この事例は、実際にニキビ悩みケア(以下、商品A)の商品購買を行った生活者を分析し、同時に何に悩みを抱えていたのかを分析してみました。
分析の方法としては、商品Aを購入したユーザーが、スキンケア大学で同時期に閲読した最後の記事を分析し、商品購入時にどんな悩み(興味)を持っていたのかを観察しました。
結果、商品A購入時に最も悩み(興味)を抱えていたのは、「ニキビ」ではなく、「口内炎」ということがわかりました。その他、ニキビの中でも「あごニキビ・頬ニキビ」、肌質のトラブルである「脂性肌」、そして「産後の肌トラブル」や「生理痛・PMS」といった悩みの傾向が見えました。
例えば、店頭の売り場において「ニキビ化粧水」と並列して、口内炎対策グッズやビタミン剤の併売提案をするといった工夫ができると考えられます。
計画購買が30%、非計画購買が70%といわれるように、店頭で自身の悩みや課題を想起させるコミュニケーションができれば、顧客単価の増加にも寄与できるのではと考えています。
■垣根を超えた市場創造
今回のリテールアジェンダに参加させていただき、リテール企業各社様がデジタルコミュニケーションに積極的に投資やチャレンジされていかれる姿勢を強く感じることができました。
弊社は、まだまだオンラインに閉ざされた企業であり、上記のように生活者の悩みデータを持って分析し、考察を出すことはできますが、それを実際にオフラインの場のコミュニケーションにどう接続するかといった点は、まだまだ勉強途中であります。
今後、市場がより発展していくために、リテール、メーカー、メディアの垣根を越えて、互いが協同し、市場を協創することが求められていると強く感じました。
この記事にて、ご紹介いたしましたデータ分析については、お声を頂戴できましたら可能な範囲で対応をさせていただきますので、是非お気軽にお問い合わせくださいませ。
講演・執筆者
株式会社リッチメディア セールス部部長
中 友秀
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